高城剛メルマガ「高城未来研究所「Future Report」」より

健康寿命を大きく左右する決断

高城未来研究所【Future Report】Vol.697(10月25日)より

今週も東京にいます。

多くの時間をクリニックで過ごしておりまして、そこでお目にかかる読者の方々からよくあるお話しに、年間でどれくらい健康に投資すればいいのかと言うご質問を頂戴します。
これは各人の状態や目指すべきゴールによっても大きく変わるところですが、正直、この時代を生き抜くためには年収の10%程度を最低でも投資しなければ、心身ともに「正気」でいられないと考えています。
なぜなら、我々を取り巻く環境があまりに悪化してしまったからです。

例えば、耳に関して。
東京に戻って痛切に感じるのは、街中の音があまりにうるさいことです。
週末の渋谷や新宿の人混みは言わずもがな、高収入を謳った広告トラックの大音量や、あちこちから聞こえる音楽や鳴り物など、日本は騒音規制が緩いため、実にノイジーな中で暮らしています。
その上、害虫対策として可聴範囲外の音(いわゆるモスキート音)が街中で相当流れていますが、聞こえなくても脳はしっかり感知しています。
いまや、耳栓がわりのブルートゥースイヤホンをしなければ街を歩くのがストレスになってしまうほどですが、こちらはこちらで電磁波の問題が発生し、同じく街中にも各種電波が飛び交います。

一般的にあまりメンテナンスする必要がない耳ですらこの有様ですので、食事をはじめとする口から入れるものの変容は、耳どころではありません。
こうして、五感を含めた全身が日々「毒」に暴露され、それが人々の心身の健康を蝕んでいるのが現在です。

新型コロナによるパンデミックは、その根底に人間と自然や生態系との間にある種の根本的な不協和が生じていることを示唆しました。
特に都市部の状況は、人間の行う経済活動の規模が自然環境や地球の許容度を超え出るまでに至ろうとしており、その結果として新型コロナをはじめとする野生動物等と人間に共通の感染症「人獣共通感染症(zoonosis)」が年々増加しています。
国連の関連機関である国連環境計画(UNEP)は、「人獣共通感染症が発生する原動力となるのは、たいていの場合人間活動の結果として生まれる、環境の変化である」と現状を指摘。
この問題を克服していくためには、人間の経済活動のあり方や環境との関わりを何らかの形で根底から見直し、その発展の方向を変えていく必要があるのは間違いありませんが、そのような様子は政権が変わろうともまったく見受けられません。

そこで年収500万円程度あるならば、健康維持やメンテナンス、いや自分を劣悪な環境から守るためのに、年間で年収の10%程度=50万円程度の投資に取り組まなければ、どこか必ず環境の悪化に暴露し、「バグ」が生じていまいます。
これが、不調です。
そこで定期的な血液解析や腸内検査、ときには遺伝子検査や認知症検査、各種点滴やサプリメンテーションなどを行いながら日々メンテナンスに励まねばなりません。

なぜなら、周囲の40代から60代の、つい気を許したために陥ってしまったがん患者を見ていると、NK免疫細胞療法やオプジーボなど高額医療や保険診療外の手立てのために、毎月100万円前後支払わねばならないからです。
この金額は、実際に罹患しないとわからないことも多く、しかも日本は二人に一人ががんにかかり、罹患年齢が年々早まっているうえに、原発不明がんが急増しています。
製薬会社に「命の値段」を一方的に値付けられてしまう前に、自分で自分の人生をしっかりハンドルする必要が、誰にもあるはずです。

そこで、第一に自分のゴール、例えば「パフォーマンスを上げたい」「睡眠を改善したい」「疲れやすい体を改善したい」などの目的や具体的な疾病の克服までを設定し、第二に信頼できる医師を見つけ、第三にそこへ到達するまでの金額をはじめに決断し、医療機関と共有することが大切です。

しかし、多くの方々の健康への投資を拝見しますと、少しづつ取り組んでいらっしゃる方が大半で、これだとなかなか功を奏しません。
健康投資は、はじめに大きく行って、少しでも改善した体感を得たら、そこから徐々に減らしていくのがコツなのです。
そうしなければ、同じように良くなったり悪くなったりする状況が永遠と続きます。
おそらくこれは健康への投資に限らず、チョロチョロ細かく色々なことに、時間もお金も散財してきたパターンに陥っている「永遠に大きな決断ができない」ことが原因だと考えます。

特にスポーツ選手や経営者には、来年度以降のお求めになりたい年収をお聞きし、それに見合って今どれくらい健康への投資を行うのかかをお伝えすることも多々あります。
就職の面接にしてもクライアントから仕事を得るためにも、先方は意図してか、もしくは知らずのうちに、こちらの健康状態を確認しようとするのが通例です。

また、幸せも買えるとしたら、何より健康への投資が第一です。
言うまでもなく、真剣な交際相手を選ぶ場合も、お相手の健康状態は必ず見るもので、どんなに素敵な洋服やブランドバックを持っても、また美容クリニックで高額な施術を受けたとしても、外見だけで形付けられた人間のエネルギーは長く持ちません。

仕事も恋愛も進化論に基づいており、人間の恋愛行動やパートナー選びは、主に生存と繁殖の成功を高めるための戦略として捉えられています。
進化心理学的には、強い免疫系を持つパートナーを選ぶことが子孫の生存率を高めるために有利とされ、特に遺伝的に異なる免疫システムを持つパートナーを選ぶことで、将来の子供が多様な免疫系を受け継ぎ、病気に対する耐性が強くなると考えられています。
そのため、男女ともに健康状態の良い相手を選ぶのです。
これらの選好は、繁殖の成功や子孫の生存率を向上させるために進化したことが各種研究から明らかになっています。

だからといって、借金してまで健康(特に美容)に投資するのは、一種の病です。
だからこそ、年収の10%を投資する決意を信頼できる医師へはじめにお伝えし、「健康の運用」をしばらく一任する。
その後、運用実績が悪ければ、三ヶ月後に途中で辞めればいいだけです。

この当初の決断ができるかどうかが、誰にも訪れる健康寿命を大きく左右するのだろう、と読者の皆さまとお目にかかりながら考える今週です。

現在、8weeks.aiの皆様のデータを拝見しながら、第一回目のレポートを様々な角度からチームで検証を進めております。
想定以上に時間を要している状況ですが、順次送付しておりますので、いましばらくお待ちくださいませ。

日に日に寒くなり、季節が大きく変わりました。
味覚の秋ゆえ、どうか食事の見直しを!
 

高城未来研究所「Future Report」

Vol.697 10月25日発行

■目次
1. 近況
2. 世界の俯瞰図
3. デュアルライフ、ハイパーノマドのススメ
4. 「病」との対話
5. 大ビジュアルコミュニケーション時代を生き抜く方法
6. Q&Aコーナー
7. 連載のお知らせ

23高城未来研究所は、近未来を読み解く総合研究所です。実際に海外を飛び回って現場を見てまわる僕を中心に、世界情勢や経済だけではなく、移住や海外就職のプロフェッショナルなど、多岐にわたる多くの研究員が、企業と個人を顧客に未来を個別にコンサルティングをしていきます。毎週お届けする「FutureReport」は、この研究所の定期レポートで、今後世界はどのように変わっていくのか、そして、何に気をつけ、何をしなくてはいけないのか、をマスでは発言できない私見と俯瞰的視座をあわせてお届けします。

高城剛
1964年葛飾柴又生まれ。日大芸術学部在学中に「東京国際ビデオビエンナーレ」グランプリ受賞後、メディアを超えて横断的に活動。 著書に『ヤバいぜっ! デジタル日本』(集英社)、『「ひきこもり国家」日本』(宝島社)、『オーガニック革命』(集英社)、『私の名前は高城剛。住所不定、職業不明。』(マガジンハウス)などがある。 自身も数多くのメディアに登場し、NTT、パナソニック、プレイステーション、ヴァージン・アトランティックなどの広告に出演。 総務省情報通信審議会専門委員など公職歴任。 2008年より、拠点を欧州へ移し活動。 現在、コミュニケーション戦略と次世代テクノロジーを専門に、創造産業全般にわたって活躍。ファッションTVシニア・クリエイティブ・ディレクターも務めている。 最新刊は『時代を生きる力』(マガジンハウス)を発売。

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